2025年1月17日
みなさんピロリ菌って聞いたことありますよね。
今ではピロリ菌が胃がん発症の主な原因と言われています。
まさか胃がんの原因がばい菌だったなんて驚きですよね。
ここでピロリ菌発見の歴史について少しお話しましょう。
ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)は、1982年にオーストラリアの医師ロビン・ウォレン(Robin Warren)とバリー・マーシャル(Barry Marshall)が世界で初めて発見しました。当時は「強い酸性の胃の中に、細菌が生息できるわけがない」と考えられていたので、多くの研究者から懐疑的な目で見られていたそうです。
そうですよね、強酸の中で生きられる細菌ってどういうこと!って感じですけど、今ではそのメカニズムも解明されています。
ピロリ菌はウレアーゼという酵素を大量に持っていて、このウレアーゼが胃内の尿素を分解してアンモニアを産生するのです。アンモニアはみなさんご存じの通り、塩酸を中和する性質のアルカリ性の物質ですから、ピロリ菌は自分の周囲に「アンモニアのバリア」を形成して胃酸から自分を守っているのです。それに加えピロリ菌は鞭毛を使った運動能力を持ち合わせており、胃が自分を胃酸から守るためにもっている粘液層の中を自由に泳いで比較的酸の影響が弱い環境に潜り込むことができる、ということらしいのです。こうやって太古の昔から人知れず存在してきたのでしょうね。
当時はそんなことは分かっていなかったので、みんなに信じられなかったのも頷けますよね。
そこで、マーシャル医師は自分の研究を証明するための大胆な行動に出ます。自らピロリ菌を飲んでわざと感染したのです。
げっ!
寄生虫の先生で、みずから寄生虫を飲み込んだって話も聞いたことがあるけど・・・
何かを成し遂げる人っていうのは、このような大胆な行動力を持っている人なんでしょうね。
その結果、数日後には胃潰瘍に似た症状が現れ、胃カメラ検査で胃の粘膜に炎症が発生していることを確認して、その後、抗生物質を服用して症状は改善したということです。これによって、「ピロリ菌が胃の病気を引き起こす」ということが、説得力のある形で証明されました。この研究成果は1984年に医学雑誌『The Lancet』に発表され、その後の多数の研究により、ピロリ菌が胃潰瘍や慢性胃炎、ひいては胃がんのリスクを高める大きな要因であることが証明されました。
ウォレン医師とマーシャル医師は、この功績によって2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
次回はピロリ菌と胃がんの関係についてもお話したいと思います。