2026年7月30日
大腸がんは、早く見つければ予防・治療できるがんです
― 大腸内視鏡検査を受けることの重要性 ―
作家の東野圭吾さんが、2026年7月に大腸がんのため68歳で亡くなられたことが報じられました。また、お笑いタレントの松本人志さんも、大腸にできた腫瘍の切除手術を受けたことを公表されています。
著名な方の報道を見て、
「大腸がんは特別な人だけがなる病気ではない」
「自分も一度、検査を受けた方がよいのではないか」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
大腸がんは日本人に非常に多いがんですが、早い段階で発見できれば治療できる可能性が高く、さらに、がんになる前のポリープを大腸内視鏡で切除することで、将来の大腸がんを予防できるという特徴があります。
日本では、年間15万人以上が大腸がんと診断されています
国立がん研究センターの最新統計によると、日本では2023年に15万4,039人が新たに大腸がんと診断されました。
また、2024年には5万4,416人が大腸がんで亡くなっています。単純に計算すると、毎日約149人が大腸がんで亡くなっていることになります。
大腸がんは、決して珍しい病気ではありません。
男女ともに注意が必要であり、特に40歳を過ぎると発症する人が増えてきます。しかし、初期の大腸がんには自覚症状がほとんどありません。
「お腹が痛くないから大丈夫」
「便通に問題がないから大丈夫」
とは限らないのです。
大腸内視鏡は「がんを見つける」だけの検査ではありません
大腸がんの多くは、腺腫と呼ばれる良性のポリープから、何年もかけて発生すると考えられています。
大腸内視鏡検査では、大腸の中を直接観察できるだけでなく、将来がんになる可能性のあるポリープを発見し、その場で切除できる場合があります。
つまり、大腸内視鏡は、
①すでにできている大腸がんを早期に発見する検査
であると同時に、
②大腸がんになる前のポリープを取り除き、がんを予防する検査
でもあります。
これは、ほかの多くのがん検診にはない大きな特徴です。
大腸内視鏡を受けた人では、大腸がん死亡が大きく減少
大腸内視鏡の効果を調べた代表的な研究の一つが、2013年に医学雑誌『New England Journal of Medicine』に発表されたNishiharaらの研究です。
約8万9,000人を最長22年間追跡した結果、大腸内視鏡検査を受けた人では、受けていない人と比較して、大腸がんによる死亡リスクが約68%低いという関連が認められました。
ただし、この研究は観察研究であるため、検査を受ける人の健康意識などの影響を完全には除けません。それでも、大腸内視鏡が大腸がんの発症や死亡を減らす可能性を示した重要な研究です。
まずは40歳から毎年、便潜血検査を
日本の公的な大腸がん検診では、男女ともに40歳以上を対象に、年1回の便潜血検査が推奨されています。
便潜血検査は、便の中に目では見えない微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。身体への負担が少なく、多くの自治体では少額の自己負担で受けられます。
ただし、便潜血検査は、あくまでも大腸がんの可能性がある人を選び出すための検査です。がんやポリープそのものを直接確認する検査ではありません。
便潜血検査で陽性になった人の精密検査は、原則として全大腸内視鏡検査です。
便潜血陽性を放置しないでください
便潜血検査で陽性になっても、
「痔があるから、その血だろう」
「体調は悪くないから大丈夫」
「もう一度、便潜血検査を受けて陰性ならよいだろう」
と考えて、大腸内視鏡を受けない方がいます。
しかし、大腸がんは毎日出血するとは限りません。そのため、2日分の便のうち1日分だけでも陽性であれば、精密検査が必要です。
便潜血検査をもう一度行うことは、大腸内視鏡検査の代わりにはなりません。痔がある人でも、その血が本当に痔からのものなのか、大腸がんやポリープからのものなのかは、検査をしなければ判断できません。
次のような方は大腸内視鏡をご検討ください
特に大腸内視鏡検査を受けていただきたいのは、次のような方です。
- 便潜血検査が一度でも陽性になった
- 血便や便に血が付く症状がある
- 便が以前より細くなった
- 便秘や下痢など、排便習慣が変化した
- 原因不明の貧血を指摘された
- 腹痛や腹部膨満感が続いている
- 過去に大腸ポリープを切除した
- 両親や兄弟姉妹に大腸がんになった人がいる
- 40歳を過ぎても大腸がん検診を受けていない
血便があれば、年齢にかかわらず、「痔だろう」と自己判断せず、当院を受診してください。
また、症状のない人でも、40歳を過ぎたら毎年便潜血検査を受け、陽性になった場合は必ず大腸内視鏡検査を受けることが大切です。
「症状が出てから」ではなく、「症状がないうち」に
大腸がん検診の目的は、症状のない段階でがんや前がん病変を見つけ、大腸がんによる死亡を減らすことです。
大腸がんは、検査を受けることで早期発見できるだけでなく、ポリープの段階で切除して予防できる可能性があります。
日本では年間15万人以上が大腸がんと診断され、5万人以上が亡くなっています。一方で、便潜血検査と大腸内視鏡を適切に受ければ、救える命があります。
40歳を過ぎたら、毎年便潜血検査を受ける。
便潜血検査が陽性なら、症状がなくても大腸内視鏡を受ける。
血便などの症状があれば、痔と決めつけず医療機関を受診する。
この3つを、ぜひ覚えておいてください。
「まだ症状がないから」ではなく、症状がない今こそ検査を受ける時期なのです。